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業務委託契約書って何?
業務委託契約書を簡単に説明すると、発注者側の業務を受注者に行ってもらう代わりに対価を支払います。といった約束事を書面にしたものです。 契約書には依頼する業務内容と期間や期限、その対価のほか支払い方法や納品物の扱いなども記載します。
また同じ会社と継続して取引を行う場合など、毎回業務委託契約書を取り交わすのは大変なので、取引を続ける上で変わらない契約条件を「業務委託基本契約書(基本契約書)」にまとめ、さらに取引ごとに「個別契約書(いわゆる発注書・注文書と請書)」を締結するケースも一般的です。
業務委託契約書を取り交わす意味ってあるの?
特に初めての取引先と仕事をする場合、商習慣などの違いによってお互いの常識が違っている事も珍しくありません。そのような状況で取引をスムーズに進めるために、取引ルールを決めて事前に書面で合意をしておくといった意味があります。
もし、取引を全て口約束や事前の合意を取らずに進めてしまうと下記のようなトラブルが起きてしまう可能性があります。
- 取引の依頼範囲や金額の認識に差がある。
- 検品時に修正依頼をしたら「そこは再委託先の作業部分なので対応不可」と言われてしまった
- 終わっていると思っていた取引なのに延々修正依頼が来る
上記の状況はどれも恐ろしいですよね…。
では例えば、契約書で下記の様に約束事を定めていた場合はどうでしょうか?
- 取引の範囲、金額、数量、成果物、納品日や支払日等を発注書に明記して取り交わした
- 再委託は問題ないが、再委託先の責任も受注者が負う条項を契約書に明記した
- 検収と契約不適合(瑕疵担保)責任の期間を相談して決めて、条項を契約書に明記した
これならば先程例に挙げたトラブルは起きにくそうですよね。
締結は手間と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、円滑な取引の成立とトラブル予防やリスク回避・低減できるメリットがあるのです。
発注書だけだと問題なの?
発注書だけで取引する場合でも直ちに何かの問題に発展するといった事はありませんが、先程例に挙げたように、事前に取引方法やトラブルになった際の解決方法の取り決めをしておく事がポイントになります。トラブルが起きた後だと冷静な話し合いは難しいですからね…。
Web制作の業務委託契約書のポイントについて
特に気にしておきたい10個を選んでみました。
- 契約形態
- 作業範囲
- 取引金額や支払い時期、方法
- 著作権
- 再委託
- 検収
- 契約不適合(瑕疵担保)責任
- 損害賠償や契約解除
- 秘密保持
- 反社会的勢力排除
契約形態
こちらは委託する業務のゴールを何にするかで契約形態が変わります。
Webサイト制作など、成果物(何かの完成・納品)をゴールにする場合は「請負」となり、コンサルティングや要件定義など、依頼した業務の遂行をゴールにする場合は「委任(準委任)」となります。
作業範囲
契約内に含める作業範囲を定義します。後から範囲外の依頼をするとスケジュールや金額に変更が発生しますので双方すれ違いの無いようにしていきます。
取引金額や支払い時期、方法
金銭トラブルを避けるためにも取引金額と納品・支払い日、支払い方法(銀行振込など)を明記しておきましょう。
著作権(著作権、著作者人格権)
著作権は大きく著作権と著作者人格権に分けられます。一般的にWebサイト制作においては対価と引き換えに著作権の譲渡や著作者人格権を行使しない旨の取り交わしが行われます。
再委託
再委託は悪いことではありません。が、再委託は禁止という場合もありますし、再委託がOKの場合でも、委託者の事前同意を得る事や再委託先の責任は受託者が負う事といった条件を設ける事が一般的かと思います。
検収
検収とは成果物が要件に沿って作られているかどうか、正しく動作するかを期間を定めて確認します。Webサイトの規模や複雑さ等によって変わりますが、数日〜数週間程度の範囲で相手と相談して決めてみてください。
契約不適合(瑕疵担保)責任
(検収を経た)納品後に何かしらの欠陥が見つかった場合の保証とその期間を決めます。こちらも検収同様Webサイトによって変わりますが、数週間〜数ヶ月程度の範囲で相談してみてください。
損害賠償や契約解除
相手方に帰責性のある損害に対し賠償を求めたり、契約違反や相手方の破産等が発生した場合は契約解除をする意味です。
秘密保持
相手方の秘密情報を、漏洩したり目的外に利用したりしないといった約束です。なお秘密保持の条項が無いからといって第三者に話して良いという意味ではないので注意が必要です。
反社会的勢力排除
ご自身や会社の信用に関わりますので必ず記載しておきましょう。
その他
相談や打ち合わせの段階で秘密保持契約書(NDA)を先に取り交わす事ってあるの?
先ほど記載しましたが、秘密保持契約書(NDA)は、相手方の秘密情報を漏らしませんよといった約束になります。相談や打ち合わせ時は社外秘の情報も公開することが多いので、実際取引を行うかどうか分からない場合でもNDAだけ先に取り交わす事は珍しくありません。
一方だけに有利な契約書ってあるの?
例えば、委託者側でしたら瑕疵担保責任の有効期限が長ければ有利(メリットがある)でしょうし、受託者側でしたら短いほうが有利だと思います。といった具合に片方に有利に働く条項はあります。ですが、一方的に有利な条件を押し付けようとしては取引が成立しないことも考えられますので、相手方と良く相談して決められると良いと思います。なお、法律の強行規定を無視した条項は無効になります。特に委託者側は独占禁止法や下請法も良く確認しておきましょう。
まとめ
業務委託契約書を取り交わしておくと、取引がスムーズになったりトラブル予防といったメリットがあります。
SNS上では契約内容にまつわるトラブルの体験談も見かけますので、問題が起きたことが無い方もこれからは取り交わしてみてください。また業務委託契約書のテンプレートは様々なものが配布されていますので、探してみるのも良いかもしれません。